カヤック遠征日記 24日目

 コックピットが海水でいっぱいになった、ちょっと不安定なビーチランディングを終え、今日の長時間にわたるパドリング終了。僕はカヤックを岩の多いビーチへと引き上げる。歩き続け、タイドラインから離れて行く、足の裏に感じる感触がだんだんと変化して行くのを感じる。岩から砂利へ砂利から砂へと…。この場所を今日のキャンプの場所にした。振り返ると、このビーチには足跡一つなく、他にだれもいない。その光景に驚かされる。ここは完全に無人島でここにいるのは僕一人だけだ。それが分かった瞬間、僕は少しその場に止まって大きく深呼吸し、この経験をかみしめた…水色の空に雲がかかり、まるでさらっと絵の具をぬったっような一面の広い空。山々が海の向こうに顔を出す。高々とそびえ立つ山が地平線へとだんだん姿を消して行く。このビーチはほんの50mくらいの幅しかなく、周りは崖に囲まれている。奥行きは20mくらいでそれより先は生い茂った林:このオアシスは予定していた目的地ではなかったんだけどな。

 漕ぎ始めてから数時間後、遠くにぼんやりと見える半島の形とデッキに取り付けてある印刷した地図を取り、見比べる。姫越山から広がる半島の少し手前に小さなキャンピングビーチがあり、そこを僕の今日の目的地にと決めた。3~5m/sの弱い風が僕の後ろから吹き、波がおどる。そのせいで進むスピードが落ちるが、無理に予定に合わせる必要はない。 Continue reading

カヤック遠征日記 23日目

 僕の足下に砂はなく、海の音もない、鳥のさえずりも聞こえない、顔に吹き付ける風もない。僕が今いるのはドライウォールと積層材の、作りものに囲まれた世界。僕の後ろにはアーケードゲームとさまざまな形とサイズがそろった帽子が並んでいる。ダークグレーの砂浜の七里御浜からほんの少し離れた街中にあるこの白くて高い建物に今僕はいる。不思議なことに、ここに座っていると 五感がとても敏感になる。壁にあるコンセントから伸びるiPadの電源ケーブルを目で追っていく。そしてそれは今僕が日記を書いているこのiPadへとつながっている。

 今日僕が伝えたいのは、数日前に友人に聞かれたことなんだけど、「ライフリサイクルや環境のことはぜんぶおいといて、なぜ、こんなことをやっているの?…ほんとうはなぜ?」

 なぜ…?なぜ僕たちは自分たちが普段生活する小さな世界を飛び出して外の世界へ憧れたり、旅をしたいというような欲求をいだいているのか?

 それは、僕が自分自身に問いかけることだ。けれどそれは言葉でというよりはもっと感覚的なかんじだ。僕は今でもあのときのことをよく覚えている。英会話の講師をしていたときのこと、建物の3階の教室の大きなガラス窓から外を見ていた。山々に覆われた風景、遠くの方まで見渡すとその頂上が地平線と静寂の中へと消えていく…ただ木のてっぺんだけが風に優しく揺れている。 Continue reading

カヤック遠征日記 22日目

今日は特に変わったこともない日だったけれど、初めてのとても困難なビーチランディング(波乗りしながら着岸する方法)を経験した。コックピットにたっくさんの海水が入り込み僕のウエストのあたりを飲み水を入れたボトルが浮いていたけど。

七里御浜海岸に近づくと、夕日がオレンジに輝き、僕の肩を照らしている。そろそろ、陸に上がってキャンプをしなきゃならない時間。周りを見渡すと、ビーチ が長く伸びている。僕は波があまりない、とても穏やかそうなスポットを選びそこへ向かった。そこへ近づいていくと、海は白波を立てて、激しく岸へと叩きつ けている。遠くの岸を見ると、それほど波が荒くなさそうな場所が見えたので、代わりにその方へと向かうことにした。僕はもう一度岸の方へカヤックを向け、 岸に近づいたらカヤックが砂に乗り上げる前に飛び降りるため、スプレースカートをカヤックから外し、降りる準備をした。もう一度振り返り、波が来てないこ とを確認して、砂浜まで素早くパドリングした。と、その瞬間背後から波が。砂浜から引き離され、カヤックの後ろが持ち上がり、砂につっこんでしまう!と 思ったとき僕は固まってしまった。 Continue reading

カヤック遠征日記 21日目

僕はテントの壁がバサバサと揺れ、頭にあたるので目を覚ました。強い風が海を吹き抜け、吹きさらしのビーチで僕のテントを今にも破壊しそうな勢いで吹き付ける。天気予報をもう一度確認すると、予報は16m/s の風と急な大雨が降る
ということだった。その瞬間急にとても強い突風が吹いてテントの杭が外れ、吹き飛ばされそうになった。なんとかしなければ。僕はテントから出た。レインフ ライシートを押さえながら、レインジャケットとパンツを身に着ける。濡れた服で寝袋が濡れてしまうのは嫌なので。天気はどんどん悪くなり昨日は穏やかだっ た海も今日は一転して巨大な波がぶつかり合い、岩に叩き付けられては高く上へと突き上げられている。僕はもう一度テントの中に戻り、寝袋を防水バッグの中 にしまう。そして水に濡れると困る物は全て片付けた。そしてまたテントから出る。僕はとても重たい木をいくつか見つけてきておもりにした。とりあえず、雨 から避難した方が良さそうだと思い、後ろの方にあった林へと歩いていき、テントが見える場所の木の下で雨宿りをした。 Continue reading